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■印刷業について考える(2)

                                                                   2002.0409


「印刷業について考える」

■ 1対1の理論
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 印刷は結局は「1対1の理論」に帰結するというのが僕の考えです。
 これは作者の意図も含めてですが、現場に限っていうと、原稿に忠実に
フィルム上に色分解や階調を表現することがまず第一。

 つぎにオフセット印刷でいえば、フィルム上での網点を忠実に刷版とい
うアルミ板に焼き付けることが二番目。そしてそのアルミ板から今度は紙
にインクを転写する際にも忠実に転写するのが三番目。

 こうして、とにかく途中で変な手を加えずに「忠実に1対1で再現する」
のが印刷です。

 多少、印刷で赤を強くしてやれとか、インクを盛ってやれというのは邪
道で、こういうことをすると全体の品質が狂います。もしくは元の品質に
戻らなくなります。原点がどこであるかが分からなくなるわけですから、
現場の品質管理は滅茶苦茶になってしまいます。

 悪い原稿は悪いけど、悪いそのままで印刷するのが正しい。
 良い原稿は良いままに印刷するのが正しいともいえます。

品質管理は、いま一時の改善という問題ではなくて、まず安定させて、そ
の上で段階的に向上していくのが正しいわけで、部分的な手直しが品質向
上であると勘違いする人が多いのは困った現象です。


■ 印刷手法による違い
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 よくオフセット印刷に携わる人は「インクの盛り具合」といいますが、
これは間違いです。そもそもオフセット印刷とは網点のパーセンテージで
濃淡を表現するという印刷手法ですので、濃度は決められたものに一定さ
せるのが正しいわけです。

 インクを盛るというのは、その前の色分解なり階調表現が間違っていた
わけですから、そこから直さなければなりません。

 一方、グラビア印刷等の凹版印刷の場合はルーペで見るとメッシュにな
っていて、その面積は一定なのですが、凹の深さを変えているために濃淡
の違いがでるわけです。横からみると棒グラフのようになっています。

 先のオフセット印刷の人がインクの盛り云々というのは、このグラビア
印刷とオフセット印刷の特性の違いを混同しているようにも感じられます。

 これが凸版印刷、コロタイプ印刷等々になると、また違ってくるわけで、
自分たちがどういった印刷方式であるかをよく理解していなければ、思わ
ぬ間違いを犯しかねないということがいえます。


■ デジタル化の間違い
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 印刷業は常に最先端の技術が入ってくる業界です。スキャナに関しても
いち早く導入したのが印刷業界でした。スキャナはアポロ計画が終わった
後にイスラエルに戻った科学者が設計したものが初期のものでした。

 ドラム式でアルゴンレーザーを使ったヘル社のスキャナは、またたくう
ちに全世界で導入され、大日本スクリーンでもスキャナを開発、販売する
というように一大スキャナ・ブームが印刷業界に訪れました。

 当時は1億円もするスキャナです。年商の三分の一もするようなスキャ
ナを、それでも導入しなければ負けてしまうということで高額のリース代
であるにもかかわらず導入したものです。そしてそれは印刷屋の経営者に
とっては夢のようなマシンでした。

 きっと、このスキャナが稼ぎ出してくれる、いままでなんかのような安
い料金ではなく、高額を請求できる・・・そういった夢がありました。

 そして確かに最初に導入した会社は、見事な再現性やスピードといった
生産性アップと、スキャナであるということで稼ぐことができました。

 しかし、しばらくすると各社がすべてスキャナを揃えるようになりまし
た。こうなると前からあった価格競争へ再度突入です。やはり1台ではダ
メか、、ということでスキャナを何台も導入しました。

 ところが相手も同じことをしてきます。やがてスキャナ神話はもう崩れ
ているのですが、新しいものが出てこないわけですから、しばらくは価格
競争に甘んじなければなりません。

                ◆

 そうこうしていると、今度はデジタル化の波がやってきました。コンピ
ュータ上で電線に止まっている雀を消すことができるのです。これはスキ
ャナではできなかったので、やはり高額にもかかわらず各社が飛びつきま
した。ここでも最初に導入したものは雀一匹を消すと10万という具合に
価格を自由に設定できました。

 ここでもやはり、しばらくすると各社一斉に導入をしてきます。しかも
購入価格はグングン下がって、いまではパソコン上で画像操作ができます。

 こうなると、やはり残されたものは「価格競争」になっていくわけです。

 僕は大事な点は、ツールに活かされる経営なのか、それともツールを活
用する経営なのかということもあると思います。一方、印刷業界はクリエ
イティブであるといわれますが、素材メーカーや設備業者から与えられる
ものだけでなく、本来の人間が、社員がもっているクリエイティビティを
もっと活かすことを実践したらいいのではないかとさえ思います。

 それは製品だけにこだわる考え方から、印刷業はサービス業でもあると
いう観点から、流通業に学ぶ必要もあるし、小売業の研究も必要になるで
しょう。

 いずれにしても、最先端の技術が入りやすい業界であるだけに、それに
甘んじることなく、威張る必要もありません。むしろ、もっと謙虚に世の
中を見渡す姿勢があれば、僕は新しい印刷業の世界が広がっていくのでは
ないだろうかと考えているところです。


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