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■印刷業への提言

                                                                      2001.0613


■これからの印刷業 (2001.0613)

 7月は、もしかすると、湘南のおぼっちゃまの会社で話をさせていただく
かもしれないのですが、印刷会社、それも商業印刷の会社では、いまチラシ
も会社案内もパンフレットも苦戦してるところが多いです。

 P競争、Qダウンに加えて、みんながカラープリンターを使うもんですか
ら印刷需要そのものが減ってきてることは事実です。

 そこで、私が提案してるのは、例えば我が社にチラシをまかせてくれたら、
100枚まくと確実に20人は来場するものを作ります、ということを実現
する印刷会社になろうということです。
 つまり、新しいテーマを掲げなさいということなんです。

 これまでのように、美しい印刷、綺麗な文字組、目新しい紙質・・・そう
いったものを並べてもお客様は注文をくれません。お客様が本当に望むのは、
スーパーのチラシであれば、それをまいたときに、いったい何人のお客様が
来場してくれるのか?ということです。

 それが、当印刷会社にまかせてくれれば、他社の十倍もの集客効果があるよ
ということなら、間違いなく入札無し、価格は高くいただけますし、納期もア
レコレ言われなくてすみます。

 十倍の集客効果。そのために全社をあげて、それこそデザイン、企画、印刷、
製本、発送、新聞屋までが、その十倍の集客効果の一点を考えて仕事をして
いく。そういうことが、今後の印刷会社のキーワードになると思います。

もっといえば、相手が儲かることを真剣に考えて実現していく企業ですね。
もしあなたの会社を正しく儲けさせてくれる、じつに親切な相手が現れたら、
いったいどうするでしょう。きっと、あなたは喜んでその人とつき合うのでは
ないでしょうか。こういうのを[コンサルティング・セールス]といいます。


■印刷と会社

 いま、印刷会社は、「印刷」と「会社」の二つに分けて考えないといけない
時代になりました。 

 印刷は、従来の印刷と、オンデマンド印刷という1枚からでもOKという印刷
に分かれます。

印刷 ----- 従来の印刷
    |
+-- オンデマンド印刷

 これからの主流は、オンデマンド印刷であり多品種少量であり、デジタルで
あることは誰もが知っています。

 一方、従来の印刷は、アルミの板もいるし、フィルムも必要だ、スキャナも
となると原価が高いものになってしなっています。その原価の高さを従来は印
刷枚数の多さでカバーしたのですが、いまはそんなに数を必要としないもので
すから原価が目の上のタンコブになっているというのが現状です。

 では、従来の印刷は全て消えて、オンデマンド印刷に変わってしまうのか?
というと、私はここしばらくはそうならないと思います。何億円もする印刷機
械の残リースをポンと捨てられるほど印刷業界は潤っていませんから、しばら
くはこれを活かしていかなければならないでしょう。

 となると、ここが頭の絞りどころですが、「従来の原価の高い印刷方式で印
刷しなければならないモノとは何だろう?。どういった製品がむいているのか。
どういう分野なら、この印刷機械を回していけるのか?」というように、従来
の印刷方式でなければというところを探していくしかないわけです。

 印刷と会社というように、印刷会社という一つのものを二つに分けて考えな
ければならなくなった背景には、印刷という冠が疑わしくなってきたというこ
とがあります。プリンターでもコピーでもいいではないか。品質も年々上がっ
てきて、もう印刷と遜色ないではないか。そういう声が、つまり意識が多くな
ってきたということは、もう印刷という看板を意識の中でははずす準備をしな
ければならないということです。印刷会社なんだから印刷だというように、こ
だわることが無意味になるのは近いということです。

 しかし、だからといって私は印刷を捨てろとは言わないわけで、従来の印刷
でなければならないという価値の再発見をしろというわけです。

 さて、これまで従来の印刷に携わってきた人にとっては、意識の上でもそれ
を捨てろというのは厳しいことでしょう。しかし、何年も前に新聞社から活版
印刷が消えました。古くはガリ版だって、コロタイプ印刷だって消えました。
 その時には先輩がもっている技術を捨てることと、新しい技術をやる側との
間にも葛藤はありました。おなじことがいまの印刷業にもあるというだけのこ
とです。

 ということは、最新といわれるオンデマンド印刷なども、いずれは消えてい
く運命にあるということです。これがライフサイクルです。人間も同じことが
いえます。ただ、人間はまた何回も生まれ変わって自己の魂を磨くのが少し違
っているわけですが。

 このように、新たに生まれるもの、いま活躍中のもの、役目を終えつつある
もの、という具合にみていくと、じつに様々なことがみえるようです。

■コンセプト重視

 コンセプト・・・これほど以前から使われて、いまは日常会話にまで入って
しかも、何がなんだか分からない言葉も珍しいのではないかと思います。

 辞書を調べると次のように書いてあります。
-----------------------------------------------------
 コンセプト【concept】
 概念。
 企画・広告などで、全体を貫く統一的な視点や考え方。
-----------------------------------------------------

 はは~ん、これはオデンの串みたいなもんかと思いました。
 ようは、いろんなものを貫いて、一つにまとめあげていくのかということは
わかったのですが、足りないものがあります。つまり「勢い」が足りません。

 なんでも人間がやるのですから、視点や考え方にプラス「勢い」というもの
がないと集団は動きません。もしくは燃えるような使命感といってもいいので
すが、そういうものがないとコンセプトは飾ってある御輿のようなものです。
 やはり御輿は担がないと面白くないわけで、参加しないと楽しくないわけで
す。

 印刷会社がよくコンセプトという言葉を使います。相手企業に企画提案をす
るときにも、「コンセプトは~」といいます。それが、あまりうまく機能しな
いのは、つまり受注に結びつかないのは、ワクワクするような、もう動きたく
て尻がムズムズするようなものが少ないからです。

 では、この勢いを増すためにはどうしたらいいのか?
 ここを考えていったら、私はコンセプトという言葉がもっと活きてくるんで
はないかと思います。

 勢いを増すために私が考えているのは、ひとつは異業種交流で、もうひとつ
はタブーへの挑戦です。異業種交流は、異種交流で、自分とは全く違う相手に
驚いて、それも認めて、受け入れる。そして自分の主張もしっかりとする、そ
ういう濁流に身を置くことで自己を磨いていくわけです。

 一方、タブーへの挑戦は、これまで常識だと思われていたことの反対側も見
てみようということで、これも訓練です。カラープリンターが印刷物のかわり
になる・・・これも印刷関連に長く身を置いた人にとってはタブーでした。

 こうして様々な角度から観る訓練を積んでいきます。そして狭い我が業界だ
けでなく、広い世の中をゆったりと眺めてコンセプトを練る。自分の利益だけ
でなく、相互利益、いえ、複合利益も考えて企画づくりをする・・そういう人
が何人いるのか? それでこれからのコンセプトを主張する会社の発展は決ま
ってくるような気がします。

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