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■仕事で育つ

                           清水 信博 2000.0614

■はじめに

 私は新潟市生まれ(S29)で、大学は東京、勤めも東京でしたが、事情があって
新潟へ帰ることになり、父親の印刷会社に入社。その後コンピュータ、MGと出
会い以来、西式MGをやっています。

■仕事で育つ。

 1975年に東京は文京区にある製版会社に入社。製版というのは印刷のフィルム
加工をする仕事で、写真や文字、色分けなどをして最終的には四色のフィルムにす
る職人的な仕事でした。

 入社したときの上司は斉木さんという人で、無口だが優しくい反面、仕事には大
変厳しく、正確なことを要求する人でした。私も社会に出たばかりで安易に仕事に
取り組んで、全員の目の前でひどく怒られて口惜しい思いをしたこともありました。
しかしそれが今となっては自分自身に役立っていることを思うと、よい上司に恵ま
れたものだと感謝しています。

 さて、そこでは毎日上司が数人の部下に仕事を能力に応じて振り分けます。仕
事がないからといってボーっとしていると「何か手伝うことはないか全員に聞いてこ
い!」と怒鳴られました。そこで全員の机にいって「手伝うことはありませんか?」
と聞いて廻ります。仕事があれば手伝い、終わるとまた別の人のところに行きま
す。

 ときには何も仕事がない日があります。そういう時はフィルムの切れ端を使って、
カッターの練習や、定規とガラス棒、筆を使って平行線を引いて技術を磨けと言わ
れました。練習ですから決して新品などは使わない。余りもの、切れ端を使います。
そうこうしているうちに仕事が出てきて、「次はこれをやれ」と指示されました。

 もしかすると今は仕事がなければ「休憩時間」ということが多いのかもしれませ
んが、それでは技術もモラルという点でも向上は望めません。

 時間中は決して休ませない。空き時間をつかってでも基礎訓練をする。
 本当のOJTがここにはあったし、そういう指導をする上司が多くいました。

 技術や品質は、仕事そのものの中に「育てる」ということが組み込まれていない
と向上していかないものだと思います。

■MG導入の成果

 その後、父親の急死(S49)もあって新潟に戻り卒業アルバムを製作している(株)
博進堂に入社することになりました。最初は現場で、やがてオフコンを担当してい
た1984年にマネジメントゲームの開発者である、西 順一郎先生との劇的な出会
いがありました。

 ある日、兄がマネジメントゲームMGに参加して、「これしか我が社を良くする
道はない」と顔を高潮させて戻ってきました。「博進堂でMGをやる!」と会議で
宣言した時には役員は何事が起こったのかと思ったそうです。

 その後わずか半年の間にマイツール、MG,ポケコンMG,シニアコースと、た
たみかけるように最先端の教育が社員に徹底されて、一年も経つと全国から企業
見学者が絶えないほどの企業になりました。

 当時の営業部長の話があります。
 その部長はイケイケドンドンの人で、とにかく「売上」さえあがるなら九州だろ
うが北海道だろうがどこにでも飛んで行け!というタイプでした。他の人が「そん
なに経費をかけて安売りしてたら赤字ではないのか?」と思っていても、こういう
筋骨型の猛者はなにしろ声が大きいし、ともかく仕事もとってくるため反論ができ
ません。

 ところが「MG」をやると売上(PQ)もいいが粗利(MQ)の方がもっと大事だという
ことがわかります。そこで営業部の女子社員が全物件の粗利をマイツールで出し
直しててみました。もちろん直接原価による粗利の高い順にソート(並べ替え)して
出すのが正解。

 するとなんと九州の物件はすべて赤字。これに驚いたのが当の営業部長。社長
室にすっ飛んできて、「九州は赤字ですから受注はやめましょう!」と汗をカキカキ
説明しました。

 ようやく科学的に真実がわかったわけです。ところが社長は、「わかりました。
では、この赤字を解消するように取引条件等を工夫してみてください」と言っただ
けで、赤字だから即やめるということはしません。これが戦略的経営者の姿。

 言い方は悪いですが兵隊は短絡的です。やるの即ですが、何も考えず撤退もし
ます。そこで取引条件や値引き等についても再検討してお客様にお願いしたとこ
ろ、九州の赤字物件はいくつかを除いて改善され、いまも取引が続いています。

 もし、MGをやってなかったら。この営業部長の指示のもと、大量出血しながら
走りいずれショック死していたかもしれない。こういったことは「まさか」と思う
かもしれませんが、案外多く発生しています。

■幹部社員の能力がカギ。
 
 いま中小零細企業が苦しんでいるのは、役員が何をすべきか!。戦略・戦術が
見えいないからだと思います。現場で仕事が何もなければカッターの使い方の訓
練をして次の能力を獲得すればよいというのは、幹部の能力開発でも同じことがい
えます。

 しかし私はかなり疑問を感じます。決算書を読めない幹部社員が多いことは常に
いわれています。決算書が読めて、自分で行動できる訓練はどのようにおこなって
いるでしょうか。経営公開と言いながら実態は、顧問税理士の説明を分かったふり
をして聞いてるという程度ではないでしょうか。

 どういう手をうてば科学的によくなるのかということは、ともすれば経営者すら
分かっていないのではないでしょうか?。その結果、会議では「売上を上げろ!」
という怒声が飛び交っているだけではないでしょうか。売上だけを追求した大手企
業が倒産している昨今です。その事実を私達は素直に見なければなからないと
思います。

 私はMGをやり続けて良かったなぁと思います。
 MGをやり続けると決算書はスラスラ読めてきます。世の中の動きや同業他社の
思惑も分かってきます。なによりも仕事が面白くなりました。社員とのコミュニケ
ーションもお互いに経営の共通体験・共通言語がありますから分かりあえるように
なりました。いまでは税理士がこうだといっても、「いいえ、うちはここをポイン
トにすればいいんです」と反論すらできるようになりました。

 もちろんMGは繰り返しやらなければモノにはなりません。私が仕事の合間をぬ
ってカッターで自分の技術を磨くのが一回ではなかったように。基礎訓練、基礎能
力は繰り返し身体に覚えさせないとイザというときに実力は発揮できません。

 剣道も柔道もピアノでもそうです。正しい方法で何回もやって指が自然に動くよ
うにならないとホンモノは育たないのと同様です。

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