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■経営に統計学を

                                                                        2002.0715


               ソフトパワー研究所  所長  清水 信博
■平均の不思議

通常、経営で使うものといえば「四則演算」が多い。+、-、
×、÷。普段使うのは、このくらいではないだろうか。決算書
ですら四則演算で出来ている。


 ここに、もうひとつ「平均」を持ち込むとガラリと世界が変
わってしまう。すでに平均なんてやっているよという方もおら
れるだろうが、これまで平均について熟知した使い方をしてい
る方には滅多にお目にかかったことがない。


 まず、平均とは「ウソ」である。ここに4ツの数字、「1、
2、3、4」を並べてみよう。この4ツの数字の平均値はいく
らか。1+2+3+4=10であるから、10÷4=2.5で
ある。しかしながら、2.5という数字は元のデータには存在
しない。このため元データに平均値を入れて数字の大きいもの
順に並べ替えても、平均値は独立して存在することになる。

 実データではないが存在は
している。まずここが面白いとこ
ろだ。


■平均値を経営に使う

 大きいもの順に並べ替えると、4、3、(2.5)、2、1
となる。この現象を経営に使うとどうなるか。例えば、貴方の
会社の商品データを粗利の大きいもの順に並べ替えておく。
 この際に平均値も加えてSORT(並べ替え)をするといい。
こうすれば全データに平均が混入するから、あとは平均を見つ
けて、そこから上は平均以上、そこから下は平均以下という具
合に、「データを、ひと目みただけ」で意思決定ができるよう
になる。


 貴方の会社のコンピュータデータはデータの最後の行に総合
計、その下に「平均値」が出ていませんか?。これでは平均が
役には立ちません。つまり、平均の威力を知らずに経営分析を
しているということになるのです。


■経営者は鷹の眼を

 全商品のデータがプリントアウトされた資料を見るときに、
あなたはどのように見ているだろうか。最上位の商品データを
眺めて、「これは売れている」、最下位の商品を眺めて「これ
は売れていない、儲からない」と判断しているだろうか。もし
くは全データを長時間眺めて検討しているのかもしれない。


 ここに「平均値」の考え方を持ち込むと、経営者の眼は途端
に「鷹の眼」になる。つまり何万データあろうとも、平均値が
先月よりも上がっているならば、その全商品は上昇傾向にある
ということが分かる。一方、平均値が先月よりも下がっている
ならば全体も下がっているということになる。この一点を眺め
ただけで全社の動きが分かる。あとは細部の検討に入るだけだ。

 まず全体から見る、次いで細部に入る。これが千メートル上
空から見る鷹の眼だ。最初から細部でウロウロするのはアリの
眼だ。


■平均値は動く

 先ほどの全商品の平均値の見方が分かったとして、次に、平
均値は「動く」ものだということが大事な点である。先月と今
月の全商品の販売データに平均値を入れて並べ替えをしてみよ
う。その結果、売上高の平均値、粗利の平均値は毎月違った位
置に出てくる。このように平均値とは「動くもの」。「流動的
なもの」であるということが分かる。

 いつもジッとしてはいない。あなたが何らかの手を打てば平
均値はそれに応えてくれる。この動作を経営に活かしたら面白
い。


 よく「ABC分析」をやられる方は多い。全商品を粗利高の
大きいもの順に並べて、上からA、B、Cと並べて検討する手
法である。
これによると、だいたい全商品の上位10%が稼ぎ
頭で、粗利高の90%くらいは稼いでいる。その他の90%の
商品が残り10%の粗利を稼いでいる。裏返せば、粗利10%
の商品群が90%という費用の大半を費やしているといっても
いい。

 このABC分析に平均を入れると、毎月のように平均の位置
は動く。ここで平均値を上げたいのであれば、上位数品目につ
いて、「値引き対策はどうするか」とか、「販売数量を上げる
にはどのようにしたらようのか」を品目ごとに検討すればいい。

 とにかく上位数品目で貴方の会社の業績は決まるのだから、
平均以下の膨大な量の品目について長時間かけて検討するのは
ムダな時間である。もし検討するのであれば、「やめる方向」
か「やるならば粗利額を倍増する方向」で検討するのが正しい。


 このようにして、貴方の会社の平均値を上げる努力をして毎
月のように検討していけば科学的経営の第一歩を踏み出すこと
にもなるし、重点管理というシンプルな経営が実現できること
にもなる。

■在庫が減って、利益が増えた?

 長崎県にあるホームセンターのO社では、この平均値を二乗
にした私の開発ソフトを経営者はじめ店長全員が使って商品分
析をしている。二乗というのは、全商品の粗利高と粗利率の二
軸などで分析するスキャターグラフ「田の字型」グラフのこと
をいうのだが、これでみると粗利は稼いでいるが率が悪いとい
う具合に、ABC分析より数段レベルの高い分析ができる。

 このO社の専務がいうには、顧客支持率と商品の粗利は相関
関係があるものだとばかり思っていたが、このグラフで分析し
たら、まったく逆の相関が出たという。

 驚いた専務は、全店長に命じて様々な分析をやってもらって
いるとか。業界の常識が覆されるかもしれない大発見である。

 また専務は、昨年来から倉庫に着目して、みずから毎朝倉庫
に直行。すべての在庫に札をはり、入出庫の理由を書き出すと
いう執念の追跡調査を継続したところ、数ヶ月で原因を突き止
めたそうだ。詳しくはO社の秘密なので記せないが、在庫が減
り利益は増え続けているという。

 小売業の在庫は売価還元法なので、銀行もおかしいと聞きに
来たが、説明を受けて納得。今後在庫はどこまで減るか分から
ないし、利益増もという嬉しい悲鳴をあげている。
                                          ■


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