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■「最強の経営手法TOC」を読んで

                         2003年11月1日
                       ソフトパワー研究所 清水信博

「最強の経営手法TOC」山中克敏  加藤治彦(解説) 日経BP社\1600

なかなか手に入らなくてようやく見つけました。

よし読むかと思って、3時間で読み終えましたが、かなり良い本です。

                      ◆

三重県名張市に本社のある「オキツモ」が舞台になってTOCを実践した
成功事例です。

オキツモは特殊塗料の会社で日本全国の50%以上のシェアを誇る優良
企業でしたが、このところ海外生産に押されて業績は低迷していました。

そこで勉強好き、先進的な社長の山中克敏氏(1941生)が、日経ベンチャー
に掲載されたTOCの記事に関心を示して、日本能率協会(JMAM)に導入
を相談。やがてコンサルタントの加藤治彦が乗り込んでくるという話です。

■2000年からTOC導入

ブ厚い、黄色の「THE GOAL」の第一刷が出たのは、2001年の5月17
日。僕はこれは黒船の到来だと思っています。21世紀になって初めての
年にまさに日本中が驚くような理論が上陸してきました。

しかし、オキツモではその一年以上も前にTOCに取り組んだところに、山中
社長の先見の明というか、鋭い嗅覚があったことには驚かされます。

■コンサルタント

コンサルタントとして同社にやってきた加藤治彦。彼は日産自動車に勤めた
後独立して経営コンサルタントとなるが、TOC理論に関しては早くから熟知
していて、しかもその本質をとらえた独自のコンサルティングは素晴らしい。

2001年から始まったともいえるTOC活動、専門書をみると、DBR理論
や思考プロセス等々に関する解説、トレーニングは多くあったが、加藤はこれ
らを最初に説明はするものの、実際の展開は、課題を決めてのディスカッショ
ンと発表に終始している。

これは、TOCの5段階の改善。それも改善のサイクルを何回でも回すという
ことを執拗に追求しながら、参加者に問題を考えさせ、それを乗り越えるとい
う訓練もほどこしているのだと思う。

これは全くの偶然であるが、私がH社でTOCのコンサルティングをした時に
行ったこととじつによく似ている。TOCをゲーム化したダイスゲームでTOC
理論を目の当たりにさせてから考えさせ、そこから毎月TOC委員を集めて
現状分析、制約条件の発見、課題、発表を繰り返していった。

異なるのは、私が自分の任期を決めて一年としたことに対して、加藤は二年
間という長時間をかけて取り組み続けたことだった。

そして、加藤がこの本で行ったコンサルティングは、TOC理論の本質をつい
ていながら、しかも、よりシンプルなものであることは素晴らしい。

ようは、TOCの目的である、メイクマネー、制約条件の解消、リソースの集
中。これだけをしっかりと軸にすえて、頭に焼き付けておけば、あとはこの本
にあるように、課題を明確にしたディスカッションと翌月までに何を行って、
どう成果が上がったのかだけに集中すればよいということになる。

■最後は人

私はTOCを指導する際に、「人が制約だ」ということをあまり言わなかった。

その理由は、安易に人が制約であるというのは、他人批判、問題回避につな
る可能性があったからだ。
それは自分は正しいということの裏返しでもある。

こういった安易な態度では企業革命はできないと思ったからだ。

しかしこの本にあるように、じつは最終的には人間が制約になる。
人間の思考そのものが、うまくいくはずのシステムを狂わせている。

昔からこうやってきたとか、一度の失敗でダメと決めつけているとか、間違っ
たゴールを見ている、間違った法則にしたがっているというのはすべて思考が
制約条件になっているということだ。

それがTOCが最終的にいいたいことだと思う。

間違った哲学という根底をもてば、その上に出てくるビジョンもルールもすべ
てが狂ってしまう。人に関する問題も狂ってくる。

人間は悪くない。しかし人間を悪くするのも良くするのも根本問題の解決が
最初であって、そうでなければ表面上に現れた現象で判断してしまう。
あいつは悪いとなってしまう。

そしてこの根本問題の解決は一般社員にはできない。
経営者にしかできない。

制約条件の解消。方針制約というのは、こういった全社にわたるもの。一般
社員ではどうにも解決できない企業の哲学をどう変えていくのかということ
になっていく。いずれは。

経営陣のブレイクスルー。しかも、あくなきブレイクスルーが重要だ。
これも継続的改善といえる。

■変える

誰しも会社を良い方向に変えていきたいと思っている。

もっと儲かる会社へと変身させたい。従業員満足度、顧客満足度も高くして
いきたいと願っている。

MGを最初にやった頃を覚えているだろうか。
きっと、なんで貴重な二日間を研修にとられてと思ったに違いない。
また研修かとか、どうせ社長の気まぐれだから一年も我慢していればと感じ
た人もいるだろう。

TOC導入も最初はまったく同じだ。

しかし何かこれまでの研修とは違う。何かありそうだと感じて継続してきて、
何が変わったのだろう。

それは自分自身が変わったということではないだろうか。

時間はかかったかもしれない。でも後戻りはしない。くさびを打ったように
もう過去の自分には戻らない。戻ることを欲してはいない。
そういう自分に変わってきたのではないだろうか。

そういう人的資源が、最終的には企業革命の起爆剤になっていく。
そういうことが、この本を読むとひしひしと伝わってくる。


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