■フィロソフィ(思想)のある経営
2004年3月8日
ソフトパワー研究所
所長 清水 信博
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■アパート探し
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息子も無事N大学に合格し、先日下宿を探しにK市まで行っ
てきた。K市は話題の原子力発電所が見送りになったために原
発関係者が来なくなり、町はホテルをはじめとして飲食関係も
打撃を受けているとのことだった。
また大学ができた当時は県外からの学生が多く、それを見込
んでアパートを建てたのだがこの不況のせいか県内の学生が増
え、しかも電車通学のほうが家賃より経済的なので、市内には
空室が目立つようになり、それにつれてプライスダウンが始ま
ったようだ。
いろいろと物件を見て回った結果、7.5畳に押入がついて、
風呂・トイレ・キッチン付で、3万でいいという新品の物件に
決めたが、他の物件も高くても3.5万。安ければ2万円台前
半というのもあったから驚く。
これなどは、需要と供給の関係でいくと、需要が極端に落ち
込んでしまったケースに相当する。ところが供給側のアパート
は、そうそう簡単に壊してしまうわけにもいかないから、プラ
イスダウンをしてでも部屋を埋めようとするのだろう。
■需要と供給の関係
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もしこれが企業における製品であった場合には、同一製品を
販売し続けるのであれば、需要という制約条件に供給をバラン
スさせるしかない。それが嫌であれば新製品や新市場を開発す
るしかない。
ところが、需要と供給のバランスをとることは口では簡単で
も、実際となるとなかなかできない意思決定である。原価意識
が働くものだから予測や見込で、生産するとか仕入れをしてし
まう。
その結果、大量の在庫を抱え込んで、しまいには大安売りを
する。大安売りの背景にあるのは在庫処分の考えである。顧客
は一見、安い買い物をしているようで、じつは在庫処分品を買
わされているということもある。
■フィロソフィーのある経営
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いいたいことは、K市でみたアパートの破格値を招いたもの
は何が原因であったということだ。それはアパートを建てた時
代に原因があったと思う。これから学生が来るぞという掛け声
のもとに建設会社も地主もこぞって儲かる方向へと動いた。
これは流行を追う姿勢と似ている。長野県のオリンピック後
の観光地を見ればわかる。
流行だけを追うと苦境に陥る。そうではなくて、本当に自分
が望んだモノを作るとか、こんなものがあったら良いのにと願
うものをつくるのが大事ではないかと思うが、それがアメリカ
でこんなものが流行っているから自分もひとつというのはあま
り感心しない。
そこにはフィロソフィーが感じられない。
これが企業も行政も町づくりにも共通する視点ではないだろ
うか。いま打つ手が未来を決定づけてしまう。まさに因果関係
である。善因が善果を産む。その根底は正しい哲学を、夢を、
希望を企業がもっているかどうかではないかと思う。
■大学の経営学
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N大学のカリキュラムをインターネットでのぞいてみたとこ
ろ三年生からは専門科目でコンピュータもやるらしい。
ところがそこに出てきたのは、あいも変らずワープロ・表計算。
インターネットである。これを見ると、観光地に行けばどこで
も同じような土産物、もしくは地域起こしの三種の神器の「漬
物」を見るような思いがしてならない。
どうしてデータベースを、シミュレーションを教えないのかが
分からない。大量のデータを放り込んでおいて、学生が自由自在
に集計したり、並べ替えたり、切り口を探させたりというような
ダイナミックな、しかも目が輝くようなことをなぜ教えないのだ
ろうといつも不思議に思う。
パソコンが生まれる前夜は違っていた。若者達が夢と希望をも
って、コンピュータに挑んでいた。それはじつに面白い時代でも
あった。
ところが、パソコンが一般化されると同時に、それは夢のある
スリリングなものというよりも、社会に出るための準備運動にし
か使われなくなった。昔であればソロバンの使い方を教えて社会
に出る準備運動をさせようという程度でしかない。
これでは教わるほうの生徒も、教えるほうの先生も面白くない
と思う。
十年一律、同じ教科書で同じ箇所で生徒を笑わせるという名物
教授もいいけれど、もう少し教育も進化しなければならない。
■シミュレーション
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話は変わるが、十年ほど前にあるソフト会社の社長に町や公園
などの設計をするソフトを見せていただいた。そのソフトの中に
は街路樹を植えるというボタンがあって、様々な種類の樹木を植
えると十年後にはこんな木に育っていますよ、というシミュレー
ションを画面で見せてくれた。
画面で植えたばかりの小さな苗木がグングン生長して、枝葉を
つけて育っていって町の風景が変わる様子はじつに素晴らしかっ
た。
こういうソフトがあれば、実際に工事をしてみなくとも事前に
いろいろなことが予測できる。対応策もコミュニケーションもよ
くなりそうだ。まさにシミュレーションができると感激したもの
だった。
じつは、そういう感激を、学生に味合わせてやりたいというの
が私の願いでもある。テクニカルな問題に走るよりも、コンピュ
ータの面白さや、だいご味をまず知ってほしいと願うのは私だけ
であろうか。
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