« ■流行らない店・流行る店 | トップページ | ■必要なもの・大事なもの »

■トレンド分析

                        2002.1015
               ソフトパワー研究所  所長  清水 信博


■トレンド分析
 
 トレンド分析は、過去数年間の実績をもとに傾向や趨勢を捉
え、その傾向値から未来を縦横無尽に予測する方法である。

 私は二十代の頃に統計学の基礎を勉強していた関係で、この
トレンド分析には大変興味をもったことをおぼえている。

 その当時在籍していた会社は、季節変動が大きい受注型の会
社で、年間の生産計画は受注情報だけに頼っていた。ところが
受注情報が確定するのが遅く、しかも納品時期が春先にいっき
に集中するために年末になっても総量の判断がつかないという
具合であった。
 
 これではいかんということで、早い時期に生産計画を立てよ
うとするのだが、黙ってみていると、昨年の九月はこのくらい
であったから、来年の九月は一割増くらい見込めばいいのでは
ないか、という判断を下していた。

 これはダメである。「あてずっぽう」という非科学的手法で
は計画にならない。では計画の精度を上げようといえば、営業
担当者は受注確定時期が遅いからだといい、管理部門において
は、営業からのデータが無いから分析できないという。つまり、
全ての部門が「分からない、できない、あそこの部署が悪い」
と、責任転嫁と意思決定のたらい回しをおこなっているだけな
のだ。

 計画などはあってなきが如しで、また総量の見えない繁忙期
へと突入することになる。

 こうして、いったいいつになったら総数が分かるのか、ゴー
ルはいつなのか、残業はどのくらい続くのかという苦情がつい
に爆発した。それは、ある繁忙期のことであった。現場の人間
が定時で総上がりするという事件が起こった。彼らは、決して
仕事を放棄したわけではない。ゴールのないマラソンに疲れき
ったのだ。

■トレンド分析で計画立案

 そんな状況をみて、なんとか先が見えない中でも精度の高い
計画をつくろうと思い立ち、トレンド分析を応用しての生産計
画立案にチャレンジすることにした。これまで学んできた統計
学の出番であった。

 まず、過去三年間の毎月の生産数量をコンピュータに入力。
各月の合計を出して、3で割り平均値を計算。これで季節変動
を加味したトレンドの大枠がつかめる。さらにその平均値の横
合計で各月を割り戻すと各月の数字が指数化される。合計を1
とすると、3月は0.08というような指数になる。ここに今
期の合計目標値を掛ければ、今期の予測生産計画ができあがる。
 
 こうして各月の生産総数は季節変動を考慮したもので完成す
るのだが、それだけでは足りない。現場に提供する情報として
は、サイズ別、型式別、材料別にと細かい予測情報も流してい
かなければならない。先ほどのトレンド分析で各月のサイズ別、
型式別、材料別のデータを指数化して、3月の合計指数が0.
08になるように計算していく。このあたりになるとコンピュ
ータのシミュレーション機能を駆使しなければならない。手計
算ではもちろん電卓でも到底無理である。

■指数化

 全ての項目を指数化すれば、あとは簡単で、来年の売上目標
数字を入力するだけで全ての項目について月別、サイズ別、型
式別の計画数値が何枚もプリントアウトされてくる。

 この計画は、受注活動の半年以上も前に作る。だから「ウソ
情報」である。しかし過去三年間の推移をベースにした計画だ
から前年対比一割増などという計画よりははるかに信憑性が高
い。しかもサイズ別というように細部にわたっての計画だから、
現場にとっては興味のあるデータである。

 こうして今期はこのくらいの数量になるはずであるから、残
業はこの程度になるし、アルバイト人員の手配はどうする、材
料の購入についてはどうかという具合に検討を重ねた。私が基
本計画を提示したら後は現場の人に微調整をしてもらえばいい
のだ

 結果はどうであったかというと、全ての納品を終えた時点で
の計画対比の誤差は5%以下。「統計学の勝利」の瞬間であっ
た。

■コンピュータ過信はダメ

 私が退職してから、このトレンド分析による計画立案は途絶
えたと聞いた。より高速の大容量のコンピュータネットワーク
システムを装備して、さらに集計も早くなったそうだ。しかし
ながら受注時期に関しては以前より遅れ傾向にあるという。

 コンピュータがいかに高速で大容量になろうとも入力時期ま
で早くはできない。仕組みを作らずにコンピュータの能力に頼
るのは間違いである。 

 また、情報に頼りきる事も間違いである。

 全ての情報が入手できないと判断を下せないという人がいる。
 じつは全ての情報を入手できた時点ではすでに勝負は終わっ
ているのである。戦いに負けた後で、「じつは、こうなってい
ました」では問題外である。戦う前に情報は少ないのが通常で
ある。いかに少ない情報から何を読みとるのか、いかに予測し
て行動していくのかが重要である。このあたりを理解していな
いリーダーは多い。

「ウソを本当にしていくことが経営活動であり営業活動」であ
るということを、もっと知ってほしい。

■ある旅館の例

 新潟県の弥彦温泉で成功しているM旅館のS社長の話を伺っ
た時に、やはりトレンド分析を駆使していることがわかった。

 この旅館では過去のデータを指数化していて、来月千人の予
約が入ると、部屋にあるビールが銘柄ごとに何本出るのかがわ
かるという。また売店のお土産も商品別にどのくらい売れるか、
カラオケの売上まで出せるのだそうだ。このために来月の仕入
れはこのくらいにしようという計画をつくっている。

 ここまで分かれば、来月の損益計算書は簡単にできる。資金
繰表もできる。月別に団体客は何人、個人客は何人くらいにな
るという予測も立てている。 そしてその精度はほぼ外れない
ともいっていた。もちろんトレンド分析であるから直近三年ほ
どのデータで毎月データの更新はしているとのこと。三年でい
い。五年前のデータは役立たない。つまりそれが「トレンド分
析」であるからだ。


« ■流行らない店・流行る店 | トップページ | ■必要なもの・大事なもの »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ■トレンド分析:

« ■流行らない店・流行る店 | トップページ | ■必要なもの・大事なもの »