■「なつかしい出会い」
ソフトパワー研究所・所長 清水 信博
朝9時過ぎの新幹線に乗って東京へ向かうつもりで、新潟駅構内で時間をつぶしてい
ると、いきなり携帯電話が鳴った。
電話は、私が以前勤務していた会社の社長からで、じつは今日、遠来のお客様がい
らっしゃるので、夕食を一緒にしないかという内容だった。しかも、そのお客様というのは、
マネジメントゲームやコンピューターの指導をしていた写真家の方だというのです。
二十年ぶりの再会。そこで東京での仕事を早めに切り上げればなんとか交流会に顔
を出すことができると答えて、東京へと向かうことになった。
◆
東京での仕事を5時ちょうどに終えて、御徒町から上野へ。もし東京駅へ向かうと間に
合わないと判断したのが良かった。上野駅発5時26分発の新幹線にギリギリセーフで間
に合って、7時33分新潟駅到着。
駅から待ち合わせの店までタクシーを飛ばして店内に入り、テーブルに向かうと、本当
になつかしい笑顔でその人は手を振っていた。まずは二十年ぶりの再会に握手をしてか
ら乾杯。おだやかな、しかも笑顔が素晴らしい人へと成長されていました。心がきれいな
まま過ごしてこられたのがよく分かる。
◆
その写真家の方は、岩手県一戸市で写真館を経営されている高村正彦さん(四九歳)。
明日はご夫婦で東京に行かれるそうだ。
東京へ行くのは、明治生命のTVコマーシャルで流れている写真の授賞式に出るからな
のだという。歌手の小田和正がバックで歌っている、「あなたに会えて良かった」というCM
をご存じの方は多いと思うが、あの写真を撮影したのが高村さんで、明日はその作品が内
閣総理大臣賞を受賞したので、授賞式に向かうというから驚いた。
私も写真、印刷関係だったので、あのコマーシャルに使っていた写真はいったい誰が撮
影したのかといつも思っていたが、それがまさか高村さんだったとは。
しかも授賞式の前日に大宮経由でわざわざ新潟まで立ち寄ってくださったわけだから、
じつにありがたいことである。
受賞した作品を見せていただいた。そこに映っていた老夫婦はじつにいい顔をしていた。
まさに素人では到底撮影することができないプロの写真だった。しばらく見とれていたらそ
の作品を差し上げたいというので、ありがたく頂戴することにした。
◆
写真は同じ場所で、同じ時間に、同時にシャッターをきったとしても同一のものにはなら
ない。不思議なものだ。撮影する人の感性や美的感覚、思想がフレームの中ににじみ出
てくる。
いまはデジタルの時代であり、写真館で写真を撮ることも、プリントすることも減ってきた
とマスコミで報道されたばかりだが、この写真をみると、撮影してもらいたいと思う人は多い
のではないだろうか。
高村さんは、撮影に来られた方と一緒にお茶を飲みながら1時間も話をするそうだ。
いろいろと話をする中で、その方の過去や、考え方をお聞きしながらリラックスさせて、そ
こから撮影を開始。しかも写真は何枚も撮る。「どうせフィルム代は安いものですから」と言っ
ていた。
だから1日に撮影できるのは、せいぜい二組が限度だそうだ。奥様にいわせると、たぶん
に効率が悪いと言っていた。しかし、お客様が出来上がった作品を大変喜んでくれるのをみ
ると、時間をかけて良かったと思うとも。
◆
また高村さんのスタジオは二十年前に私が伺った時のままで、本当は改築をしたいの
だけれども、立て替えるのはずいぶんとお金がかかるので、どうしようかと相談をうけた。
たしかに素晴らしい作品をとり続けているから、お客様も増えているし、スタジオもきれい
にしたいと思うのは当然かもしれない。しかし大金をかけてスタジオを改築すれば、そお借
金返済のために仕事を受注せざるをえないこともある。
そうなると本来目指していた仕事とは異なる仕事でもやらなければならないかもしれない。
仕事の効率化を求めて、間違った方向へと向かうことも考えられる。難しい意思決定だ。
私が言えるのは、もう50歳という年齢だけに、ご自身の使命感で意思決定をされたらい
かがだろうか。としか言えなかった。
お金を稼ぐことも、子供に財産を残すことも悪いことではない。しかし、それよりも大事だと
思うのは自分たちがどんな生き方をしていったら、正しい幸福へたどり着くかということだと
思う。
◆
気がつくと時計の針は12時を刺していた。時を忘れたのだろう。
高村さんご夫妻には是非、素晴らしい写真家として幸せになってもらいたい。熱心に真面
目に仕事をしている人が幸福な人生を歩める世の中であってほしい。そう願ってホテルまで
お送りした。
、私が二十年前に一戸市へ行っていた時に知り合ったのが、MGでは有名なマイツール
マトリックス会計ソフトを作った、二戸電工の下斗米社長であり、初の中小企業長官賞受賞、
元気が出るシステム開発者のベル開発・沢田司氏であった。その縁を結んでくれたのも高
村さんであったということをお伝えしておきたいと思う。
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