■戦略MQ会計でコンサルティング
2000.1201
■MQ会計でコンサルティング
私が毎月行っている会社の経営会議が先日あり、月次MQ会計、資金
繰計画、今後のネタ(営業受注予定)管理、と会議は進んでいった。
途中、社員のS君から「これまで数字の話が多かったが、今日は経営
戦略についての話をしたらどうか。営業会議だけでなく、この経営会議で
も具体的な経営陣の考え方を聞きたい」との発言があった。
こういう積極的、かつ具体的な提言は嬉しい。早速、その件について全
員から意見を求めた。業界全体が縮小しているとの意見から、内部コミニ
ュケーション不足、顧客ニーズが分からない等々、様々な意見が出された。
最後に意見を求められたので、これはSTRAC(戦略MQ会計)から説明した
ほうがいいだろうと思い、来期の経営計画書を全員に見てもらいながら説
明をすることにした。しかし、STRACを見てもらうからといって、何も数字の
説明をする気はない。だが、科学的に説明するのだから、しかも来期の事
であるから、STRACを手元に置きながら説明するのが最も確実なわけだ。
■PQ(売上)は、P×Qの掛け算。
来期のPQを見てみよう。来期は○億の目標となっているが、この○億
は、P×Qで成り立っている。そして、皆さんが言うようにP(単価)は今後
も下がるだろう。そうなると、Q(受注物件数)を増やすしかない。
ところが、「Qには二つ」あることを知ってほしい。それは新規受注のQと、
繰り返し受注のQの二つがあるということだ。新規受注Qは、営業の方も
考えて行動しているからそれにまかせるが、繰り返し受注Qに関しては、
相手のニーズを知らないと受注できない。
これまで、相手を○○業界としていたからニーズは全く掴めなかった。
それを、より細分化して、窓口、担当者まで細分化してニーズをとらえる
ことではじめて受注確定度は高まる。できれば、そういったニーズはコン
ピュータでデータベース化してほしい。
しかし、ニーズをとらえることは「最高」ではない。その上がある。
それが「ウォンツ」だ。ウォンツをとらえたら、これはもう強い。しかも相手
ごとに(よくいわれるONE to ONE マーケティング)、それをとらえることが
できたなら10年は儲け続けられる。
ウォンツとは何か?。それは閑散とした商店街が、アーケードを新築した
いとか、駐車場を無料に、道路整備を・・という要求がニーズで、ウォンツ
は、「とにかく、お客が来ればいいんでしょ?」」というように、腹の底にある
ものだ。戦略的といってもいいが、言われてはじめて「そうでした!」と本人
が気づくようなものがそれだ。これを掴んだら強い。
逆に、つかまれた相手は、「この男は凄い!」と惚れ込んで、多少の
予算などの細々した事はどうでもいいというくらいファンになったりする
ことがある。
ここで言いたかったことは、Qには二つの性格があるということ。
単に「売上を上げましょう」では具体的な行動が見えてこない。
売上をPとQに分けて説明するとよく分かるし、動きがとれる。
■VQ(変動費)ダウンにも二種類ある
この会社は、VQダウン、とくに外注費の削減が大きな課題になっていた。
ところが内部人員不足との理由から外注費の削減をしたいなら、人員を増
やしてくれと社員は言う。
こういう答えは、どの企業でもある。いつもそういう意見が出る。たしか
に忙しいことも分かるが、人を増やして解決するのでは戦略的とはいえない。
こういうことは経営者は「勘」で分かっているが説明がうまくできない。
そこで、「VQにも二つある」を言わなければならない。外注費でも、ひと
つは、この会社で決してできないもの。設備がないとか、技術がないという
明確な理由があって外注に出すものは良しとしよう。一方、誰も手が空いて
ないから外注に出しましたというのは一考も二考も余地がある。
これを解決するには、スケジュール管理しかない。いつ、どこで、誰が、何
をしているのかが一目瞭然になっていれば、手の空いている人間を確保する
ことができる。いまは各人の手帳の中にスケジュールが書かれているために、
情報がオープンになっていない。それが最も大きな問題だ。
情報のオープン化は、まず全員の能率手帳を捨てさせて、コンピュータ化し、
それを誰もが見られる状況を作ることが最初だ。もし社長を同行させたいの
ならば、電話や面談で何回も社内アポをとるのではなく、パソコンで社長の
あいてる日をクリックしてしまえばいい。
社内コミニュケーションの問題も、スケジュール管理をみんなが隠して仕事
をしていることから悪化しているのではないだろうか?。コミニュケーション
も仕事中心で、オープン化すれば、私はきっと良くなると信じている。
ということで、外注費の削減は、まず自分たちの工夫でおこなうことが良い。
しかし、自分のスケジュールをオープンにするというのは抵抗がある。この
会社では営業情報を全て吐き出すよう訓練して10年かかったが、今回の
スケジュールのオープン化は「第二の脱皮」のための大きな意識改革がな
ければできない。本気の決心覚悟でなければできない。
はたして、できるかどうか。私のコンサルティングの正念場でもある。
■F(固定費)は、F1(人件費)以外は減少傾向。
Fについては今後とも面白い傾向がある。それはITに関連した項目が自然
減となる傾向だ。通信費、旅費、広告宣伝費、車両関係費等々については、
ここ数年で減少してきた。今後もさらに減少傾向がある。家賃なども「このご
時勢ですから・・」と言えば多少は下げてくれる事もある。
しかし、もっと大事な事がある。それはITとは何か?をSTRAC上で明
確に定義しておかなくてはいけないということだ。パソコンは確かに安くなっ
た。ソフトも毎年ゼロが一個とれるくらいの勢いで価格が下がっている。そし
て、企業はこぞってパソコン投資をしている。
結論を急ごう。私が言いたいのは、IT、情報化投資というのは、Qに比例
してFが上がらない事をいう、と言いたいわけだ。PQ(売上)が上がるから
Fも上がりますというのはITではない。情報化投資ではないと言いたい。
むしろ、PQ(売上)が上がるけれど、Fは下がりますというのが情報化投
資の正しい姿ではないだろうか?。真のITではないだろうか?
もし、PQ(正しくはMQと言った方がいいのだが)が上がるつれて、Fも
上がるならば、やがては昨今の大企業並に肥満児となり、決して筋肉質
の強い企業にならないことは明らかだ。それは育っているとはいえない。
という話をした。
■G(経常利益)には、3種類ある。
ようやく最後の項目、STRACの目標Gまできた。このあたりまでくると
全員の目が輝いてきた。先のニーズのデータベース作り、スケジュール
管理と話をしているうちにイメージが膨らんできたようだ。
S君も、他の誰かが「スケジュール管理はパソコンだと時間がかかる」
と言ったら、「では私が全員のところを回って手書きでも作ります。1時間
かかったとしても、それを作ることで私がどんなにか助かることか・・」と
言うほど熱が入っていた。
しかし、何をすれば良いかが分かり、勢いが出てもそれだけではまだダメ。
経営には「成果」がなければならない。しかも狙った成果を高確率で成し
遂げるのが我々のやることだ。勢いだけで突っ走るなら、戦略的経営とは
いえない。ましてや知的でも人間的でもない。
とにかく、10年先を見なければならない。10年後にどうなっているか。
私がいいたいのは、数字を積み重ねて架空の未来を見ることではない。
10年後のイメージをみんなが共有することが大事であり、10年後の
成果から逆算するくらいの「計画性」が欲しいわけだ。
さて、Gに話を戻そう。この企業では、Gは800万以下を目標にしている。
800万以上出してはいけないことにしている。税率の分岐点が800万であ
ることもあるが、この企業の体質として過去に数千万の利益を出して苦しんだ
ことがあった経験から、経営計画は右肩上がりにはしていない。
もちろん企業によっては、利益の考え方は違うだろう。しかし、この企業で
は「利益の下限と上限」を儲けて、必要利益という考え方を定着している。
二つ目は、社員、株主配当、内部留保を明確に分けたことだ。この会社は能
力給の導入でも、私がラッカープラン式給与体系を導入した初の企業だ。その
ため、Gの配分でも独特な手法を講じてある。
これによって誰がいくらの特別賞与をもらえるかは計画段階でわかるように
なっている。これは、私が「敗者復活制」と呼んでいるもので、能力給は個人
ベースだが、最終のG配分については、全員が何らかの配分を受けることが
できるようになっている。
このため、個人の能力向上に目を向けると同時に、全体の成果に目を向ける
給与システムができあがっている。
だから、全員の目が「G」にも向くことになるわけだ。
三つ目は、Gは未来の費用であるという説明がいる。企業は収益だけを
延々と受け取るだけでは成り立たない。費用を使うからこそ収益が上がる
構造になっている。もし、貴方が体力をつけたいとするならば、筋肉を使って
エネルギーを消費するだろう。消費するからこそ体力がつくのと同じ事だ。
同様に、企業が社会貢献をしたいというならば、社会貢献にも費用はかか
る。費用はかからないといっても、時間がかかるということは、すなわち費用
がかかるということを意味する。
そして社会貢献が認められるのは、いつも先のことになる。本日ただいま
の活動が、即時評価されることは希にしかない。ということは、費用が先で
収益は後という構図になる。しかし、企業にはそれだけの費用はあるのか?
といえば、それは過去の利益をそれにあてるしか手はない。銀行は貸し渋り
の時代であるが、今も昔もこの構図はそんなに変わってはいないと思う。
■話を終えてから
その後、この会社に限った事ではないが、今回私がやろうとしたのは、
何だったんだろうかとボンヤリ考えた。
それは西 順一郎氏がいつも言っていた、経験と科学と人間の融合した
経営をいかに多くの人に知ってもらい、実現し、金儲けをしてニコニコ顔の
企業をつくるか?
そこに焦点をあてたコンサルティングだったのかもしれないと後になって
気がついた。
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