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■TOCを考える

                                                                     2001.1225


■TOCの話題

 私が16年前にいた印刷会社の話をしましょう。
 なぜなら、その話をすると話題のTOC(制約条件の理論)が
理解しやすいと思うので。

 そこは卒業アルバムを作っています。社員数200名、年商25億。
 卒業アルバム以外にも会社案内などの一般印刷がありますが、
それは年商のほぼ二割程度。いきおいアルバム中心の考え方に
なりやすい状況です。

 毎年4月になると受注活動をおこないます。
 そして納品するのは翌年の二月、三月頃。

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                       ***   *
            決        **       *
            算     ***         *
 4  5  6  7  8  9  10 11 12  1  2  3  **
 +--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+--+
 **********************

 とすると、閑散期、繁忙期は上のようなグラフになります。
 決算は9月。

■仕掛かりを増やせという方針が制約だった。

 9月決算前には仕掛かりを増やせという指令が出ます。
 どこでも製造関係の会社でしたら、決算の時には仕掛品で利益を
調整してますから、なんとか前年同くらいにはもっていけという指示
が経営陣から出るものです。

 ところが仕掛品といっても集まってくる原稿は、4月頃の桜のシー
ズンの校舎の写真や個人写真程度しかないし、しかも顧客である写
真館さんには全国的にルーズでいいよという甘い話をアルバムメーカ
ーがささやいてますから、そうそう早期に印刷原稿は集まりません。

 しかし印刷会社の幹部は昔から、早期入稿せよとしか教育されて
ませんから、若手営業マンに「とにかく早く原稿を集めてこい!」という
命令を出します。頭から湯気を立ててこれしか叫ばない。
こういう幹部がじつに多い。

 こうして到底無理であるのに顧客に頭を下げて少ない原稿を集めて
印刷仕掛品を作るとしましょう。話は少し変わって、印刷会社は設備
集約型に移行していて、それまでの労働集約型(これはスキとかクワ
で畠を耕すこと=力仕事)から、大型機械でバンバン、スピードアップで
仕事をしようじゃないかという方向に企業体質を変えてきました。

 大型機械ですから印刷する時はA4サイズの数倍もあるアルミ板に
様々な学校の原稿を焼き付けて(多面付けという)、大きな紙に一度に
印刷をするわけです。

 ところが、こうなると少し不都合が出てきます。多面付をした様々な
学校の印刷枚数が同じであれば問題はないのですが、印刷枚数が
まちまちなものを一緒に付け合わせしてますので、一番多い印刷枚数
に合わせて印刷をすれば、それより少ない印刷枚数のものの差額分は
ロス、ムダになるわけです。

 こうして9月に苦労して集めたものを印刷すると、ドンドン、ロスが出ます。
 ではどうしたらよいのか?。答は12月まで印刷しないことです。12月に
なれば印刷枚数がほぼ同じような物件、材料が豊富に手元に集まってくる
ので面付けは楽になります。ロスは少なくなります。

 12月まで印刷しなければ納期に間に合わないではないか?という事を
言われそうですが、じつは11月は七五三で写真館さんはそちらのほうが
儲かるので、卒業アルバムの原稿作成は一時棚上げします。そうすると
印刷会社には原稿が入ってこなくて、毎年のようにこの時期はみんなが
ボーっとしているわけです。
 ですから12月から印刷を開始しても何ら問題はないのです。

 ここでは「頭の切り替え」さえあれば、ロスも経る、早い時期から在庫は
もたなくていい、残業もいらない、アルバム以外の他の仕事をバンバンい
れてもよろしいということになります。

■外注管理

 年末になると年商の8割である卒業アルバムが幅をきかせます。つまり
それ以外の印刷物は出て行けというわけです。このために外注費が増大
します。これはコストアップ要因になります。

 では本当に繁忙期にアルバム以外の印刷物は自社製作できないの
だろうかというとそうでもありません。いまでは私が居た当時の学校数で
3倍、原稿量では4倍もありますが、残業はあまりしなくてよくなりました。
私は朝の8時から夜の11時まで仕事をして、さらには徹夜もしていたのが、
いまでは7時、遅い人でも9時くらいには仕事を終えているそうです。

 生産のパワーはずいぶん上がったといえます。ですから二交代でマシン
を回せばいいんです。ようはMQとFの関係がどうであるかで考えればいい
だけのことです。

 シーズンであるから、それだけしかやらないという「思考」が問題です。
 この考え方、癖、習慣が儲かるはずのものを儲けさせなくしていたの
ではないか?。これも、TOCでいう制約条件です。

■常用雇用パート

 冬場の繁忙期には100名ほどのパート、アルバイトが来ます。それは
いいとしてこのパート、アルバイトの一部は閑散期の夏場にも出社してま
した。これはおかしいことで、正社員がボンヤリして、パート、アルバイトが
仕事をして、それで人件費が上昇しているとボヤくのは間違っています。

 なぜこのようなおかしな現象がでるのか。それは冬場に来てもらうために
雇用しておかないとという現場長の不安感が常用雇用を招いていたわけ
です。これを減らしたらという私の提案で夏場の雇用をカットしただけで
人件費が下がりました。

 これも「過去からの思考」が制約条件になっていたという一例でしょう。

■TOC

 これらの事例をひいたのは、TOCはモノ作りそのものだけの問題に使え
るというのではないと言いたかったわけです。先の例でいうと早くから
仕掛品を作らずに、つまり「何もしないこと」がMQを増やすことにつながる
こともあるということでした。それはFを下げることでもあるわけです。

ともすれば、もっと受注量を増やすしかMQアップの道はない。それには
マシンをより大型化して、人員増をしていくことしかないと考える、その
思考方法に問題がありました。それ以外にも道はありました。

 それを知ることがMQアップの方向に進路をとる始まりです。

 TOCで内部をアレコレやってもMQアップにはつながらないだろう。
MQアップは外部に打って出るしかないよという考え方だけが正しいの
ではないよ、と私はいいたいわけです。
 じつに戦略は一つであっても、戦術は無数であるということを述べ
たかったわけです。(^_^;)


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