■オンライン・バンキング・システムのバグ発見
■それは偶然見つかった
オンライン・バンキング・システムのバグ発見といっても私はハッカーではないし、そのような力も持っていないので、偶然見つかったというだけのことです。
ことの起こりは数日前。毎月取引があるN研究所に振込をしようと事務員さんがH銀行に行ったことから始まりました。
いつものように、振込カードを機械に入れてN研究所の名前をみると、別の振込先の名前が表示される。これはおかしいと思い何回かチャレンジしてみたが、どうにもうまくいかなかったそうだ。
そこでH銀行の窓口担当者に尋ねると、「そんなことはない。初めて聞きました」といって担当者が操作をするも相変わらず別の名前が出てしまう。
「おかしいですねぇ。これはちょっと本部に聞いてみますので、今回は窓口で振込みをしてください」ということになったそうだ。じつはこれが大問題となるバグの始まりだった。
■大変な事実が分かった
翌日、その銀行の支店長から電話があり、詳しいことはお伺いしたときに話しますが、まずは申し訳ありませんでしたと何かあわてている様子だった。
翌日午前中十一時ならばこちらも都合がいいのでと伝えておいたところ、時刻どおり支店長と副支店長が手土産を持って来た。そこで初めて今回の振込みミスについて知ることになった。
聞くと、その銀行から別の銀行への振込みについて最近オンラインソフトを変えたばかりで、まさかこんな大きな問題が起こるとは思ってもいなかったとか。ようは、振込専用カードの読み取りのバグだというのである。(以下、支店長の説明によると)
振込カードは3箇所登録できるようになっているがその2番目がエラーを起していた。
N研究所の振込先は2箇所あって、その2ツの口座は名前が違うにもかかわらず、なんと口座番号が全く同じだった。まずこれが間違いの元だ。
しかもメインの口座名はともかく、二つ目の口座名やたら文字数が多い口座名だったので、通常ならば銀行名、支店名、支所名、口座番号など4行でいいところを、5行もしくは6行も使ってしまったことで、2番目を3番目の振込先だとコンピュータが勘違いしたのだそうだ。
2番目が3番目に繰り下がると、今度は3番目がクルリと1番目に上がってしまい、その結果1番目の口座名が2番目になって画面表示してしまう。
■バグの正体
事務員さんが何回振込み操作をしようとしても別の振込先が画面表示される原因はこれだった。結局、これがオンラインソフトのバグであると分かったが、当のH銀行、また振込先のM銀行の内部では大問題になっていた。
H銀行は地場の有力銀行であり、M銀行は全国レベルの超巨大企業であって、取引先も多く、よくこんな問題がこれまで起こらなかったものだと支店長はビックリしていた。
■旧型機はOKで、新型機はダメ
ちなみにH銀行の副支店長の説明によると、旧型のマシンは何ともないが、新型のマシンで不具合が出るそうだ。
H銀行では支店の統廃合で先日もある支店を取り壊し本店に併合。それでは顧客に迷惑をかけるので最新の端末を大型店舗に設置したばかりだった。
その最新マシンで不具合が出たから、支店はじめ銀行全体ならびにソフト会社をあげて上を下への大騒ぎになったわけだ。
■何万人もの人間がチェックしても
今回のバグ発見は私のところで小額であったから良いようなものの、もしこれが数千万単位の振込みミスが各社で発生していたらと思うとゾッとする。
もしカードに登録されているからといって数千万の振込みを相手先も確認せずに送金ボタンを押したらどうなるだろう。振込まれた会社はあわてるし、入ってくるはずの売掛金が入らない会社は倒産するかもしれない。
コンピュータ社会といえども、やはり最後は人間の目で確認をするということが絶対条件だということを痛感した。
いずれにしても、巨大銀行間、ソフト会社の数万人がテストを繰り返しているにもかかわらず、このような初歩的なバグが出るとは。
■重大事にならずにすんだ
今回のバグ発見は、早い時期だったことで事なきを得た。
支店長も顧客に迷惑をかけて申し訳ないという気持ちと同時に、バグを大問題になる前に発見、対処できたことでホッとしたのだろう。「これに気づかなかったら大変なことになっていました。本当にありがとうございました」といって帰っていった。
大きな問題であったにもかかわらず、事前に解決できて、誰の首も飛ばすに良かったと思える出来事でした。
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