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■なぜ儲からないのか

 なぜ全員が必死になって働いても儲からないのか。その原因は何か。ある企業をモデルに話を進めていこう。

■日本の少子化問題
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 21世紀になって、ますます少子化が進んでいる。このままいくと2050年には現在の1.25億人が1億人へ。そして15歳以下の1987万人(1995年現在)が、1316万人へと670万人も減ってしまう。

 そしてこの少子化は文句を言っても食い止めることはできない。玄関を出て、少ないと叫んでも子供達が生まれてくることはない。自分達の努力ではどうにもならないものを「外部条件」という。それに対して自分達の努力で補えることを「内部条件」という。

 私たちは、通常この内部条件を突付いて、外部にいかがでしょうかと提示して、お伺いをたて、よろしいとなれば相手は買ってくれて、それが売上となる。

 まずこれが大前提の話である。

 自分達ではどうにもできないものと、できるものがあるというぐあいに分けて考えることが大前提にある。天気や地震などもそれだ。予測できない。

 だから売上を上げましょうというときに、外部条件を無視して、「いや、どうにかなるよ」とか「気合さえあれば」と精神論で社員の尻を叩くのは、機関銃やミサイルを持った敵に素っ裸で突っ込んでいくようなもので、全員が討死にする。

■少子化問題はマーケットサイズ
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 少子化問題はマーケットサイズが極端に小さくなっていくということだ。マーケットサイズが小さくなると競争激化になる。通常はPダウン合戦で仕事を奪い合うようになる。このため小さい会社は跳ね飛ばされて倒産する。

 もしPダウンしなければどうなるか。製品品質が変らなければ、サービスや付加価値が同じであれば、お客様は仕事を出してはくれない。いわゆるQダウンでこれも倒産してしまう。

 だから当面の策として、誰もが「Pダウン=他社と歩調をあわせる」わけだ。 ところがマーケットサイズがまた縮小するわけなので、歩調をあわせられるとこちらが倒産してしまう。よってまた一段とPダウンで差をつけようとする。

 すると負けじとこちらもPダウンをしていって、結局はドロ沼の戦いになるというのがよくある例だ。これを回避する手立てはないのだろうか。いやそれはある。

 新製品開発ではない。新製品開発や突飛なアイデアはそうは出てこないから、それを期待するわけにはいかない。どこの会社にもスーパーマンのような凄腕の戦略マンがいるとは限らないし、児玉源太郎も秋山真之もいないからだ。

■まずは自社の内外の構造を見てみよう
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 自分の会社の前後だけを見るのでは足りない。もっと長距離で考える。もしくはロング・スパンで物事を見なければ、この問題は解けない。たとえば、次のように

 仕入業者→★自社→顧客

 これは普通の人間なら誰でも考えるところだが、よりロングスパンでとなると、次のようになる。

 その前の業者→仕入業者→★自社→顧客→その先の顧客→最終消費者

まだまだロングスパンで考えることはあるが、あまり長くてもまとまらないので、これくらいで考えてみよう。

■卒業アルバム業界のモデルでは
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 私がいた卒業アルバム業界をモデルにして考えると。

 仕入業者→★メーカー(自社)→写真館→学校→子供→親

 簡単に書くと上のようになる。

 そこでそれぞれの言い分を聞こう。まずは親から。

●親の言い分

 卒業アルバムはあったほうがいいとは思うが、あまり高額であっては困る。とにかく子供が立派な社会人になるのが先決で、受験もあるし、お金のかかるものは他にいくらでもあるから、そちらのほうが大事。

●子供の言い分

 卒業式で初めて受け取って嬉しかった。
 そしてみんなで見て、自宅で見て、本棚にしまったまま。

●学校

 進学、イジメ、学力低下、校内暴力、保護者や教育委員会との問題。教科書問題など毎日が大変な中、卒業アルバムは大事だが問題なく納品してくれれば有難い。品質については普通以上、値段もあまり上げると保護者から言われるので値上げはしたくない。

●写真館の言い分

 一生の思い出に残る卒業アルバムを作って届けたい。しかし年々生徒数が減る中で一年かけて取材したのに売上からみると採算がとれない。しかし値上げも要求しにくいので、もっと効率よく良いものを提供することはできないだろうか。もしくは自分の店の経営も危ういので、卒業アルバム以外の収入の道をつくっておかなければ。

●メーカーの言い分

 生徒達の一生の思い出となる高品質でデザイン性もあるもの。付加価値のあるものを作っていこう。しかし少子化の影響は大きいので内部効率を上げるための生産性向上をしよう。それだけで少子化の影響を補えないから他の事業も伸ばしていかなければならない。

●仕入業者

 メーカーが苦しいのは分かるが、そうそう仕入価格を下げてもらうと、こちらも利益を圧迫される。アルバム業界とは長い付き合いだから大事ではあるが印刷業界全体から見ると5%もいかないから、あまりムリを言うようであればこちらも多少は強気で応対しなければ。

★このように「立場」によって、こちら側への興味というシェアは異なるし、自分が思うよりは相手が感じる付加価値、興味のシェアは小さいというのが事実である。

■離れるほど興味は薄れる
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 また上の「言い分」をご覧いただくと分かるように、自社から離れていくに従って、一番訴えたいことや付加価値などは薄れていくことがわかる。

 最終顧客は卒業アルバムという印刷物だけではなく、デジカメで写真を交換したり、プリクラであったりと選択肢はいくらでもある。選択肢がいくらでもあるということは付加価値は薄まるということだ。

 ここを勘違いすることがよくある。

 いいものを作るということは大事だし、モノ作りのプライドも大事ではあるが、勘違いによって錯覚を起したり、思い込みをすると、他人が欲しくないものまで提供してしまうことがある。つまり売れないものを提供して「売れないと嘆く」ことになる。

 具体的に見ていこう。じつは私たちは遠く離れた存在にまで直接影響を与えることはできないのである。メーカーが子供達一人一人と会うことはできないし、考え方を変えさせることもできないし、ましてや顧客を自分たちの都合のいいように動かすことなどはできないと知ることである。

 影響を与えることができるのは自分達が直接触れ合うことができる数段階までで、これが真実である。

■売れる仕組み
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 売上を伸ばすためにはどうしたらいいか。まずは構造を明らかにした。続いてはアプローチについて考えてみよう。

 答えは「相手にとって有難い存在になる」ことであり、「付き合いたくなるような存在」、「発注せざるを得ない条件がある」ということです。
 顧客は常に問題を抱えています。その問題を見事に解決してくれるようであれば可愛いやつだと思うでしょう。

 皆さんも「自分を大切にしてくれる人」をムゲにはしないし、逆をいえば「私をバカにする人やいじめる人、損をさせる人など」とは仲良くしないはずです。
 お客様も同じで、自分の気持ちをくんで理解して悩みを解決してくれる人とは離れたくないはずです。それをやればいいんです。そうすればPはその後の問題になります。

●具体的にいえば

 品質がいい。安定しているということは大事な条件です。品質は高品質も大事ですが、不安定な品質は不安を招きます。QCは安定品質ということです。

 どこよりも納期が確実であるというのも大事な条件です。また、直前になって刷りなおしがあっても笑顔でやってくれれば、これもいい会社という印象を持ちます。校正を出してといったら三日で届いたというのもお客様に喜ばれます。

 学校との板ばさみで苦しんでいる写真館にとっては学校からクレームがこないというのも大事な条件です。

 顧客の背後関係まで眺めて問題解決をしなければなりません。そうしなければある日突然出入り禁止になることがあります。

●ではそれをどのように実行するのか

 これらを具体的に実行するには、考え方を変えなければなりません。生産革命をしなければスムースな流れができません。MGをやって、原価計算の考え方を大幅に変えないとできないことです。TOCも脳力開発もマイツールもやらないと不可能です。

 つまり「企業構造」を抜本から改革しなければ、高品質、短納期、サービス向上、時間的余裕、企業バランスなどができないからです。

 そしてこの構造改革は全社員のバックアップのもと、行わなければ不可能です。営業だけが突っ走っても失敗するし、事務が私は知らないよといっても失敗します。もちろん経営者が決心覚悟をしないことには全軍は一歩も進みません。

■まとめ
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 売るためには「売れない理由」をいくら集めても役に立ちません。逆に「顧客が買わない理由」を集めてくることです。その買わない理由を、好条件で「買わざるを得ない状況へと転換」することがMQ戦略です。 

 顧客の頭の中のモヤモヤとした雲を、きれいに取り去れば、相手は喜ぶし、対価を支払うわけです。そのモヤモヤを「問題」といいます。よって、顧客の問題解決をするために、こちらが身を粉にして企業構造を改革し、スイスイと提供できるようにすることが「より売上を伸ばすコツ」ということになります。

 ちなみに、問題解決は今風にソリューションと言われてますが、本屋によく並んでいるソリューション関連の本はどうも違うようです。

 顧客のハラワタまで入った問題解決ではなく、ちょっとした便利さに対応するものが多いようです。それでは顧客はあなたの会社に仕事を出そうとは思わないものです。

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