■のこぎり目立て会社のTOC成功事例
■わずか二週間で会社が変った
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今日はS県に来ている。ここで11月の初めにTOC研修を行った際に参加した材木を切断する巨大ノコギリの目立てをやっている会社を見学することになった。
というのも、研修受講後わずか二週間で会社が一変したというから、本当かどうかこの目で確かめたいと思ったからだ。O市に到着するやいなや出迎えてくれた市役所の担当者の車で乗って向かった。そこは山間の小さな工場だった。出迎えてくれたI社長のご案内で早速工場を見学に行った。
工場に入るやいなや驚きの声をあげたのは以前何度も見学している市役所の担当者であった。仕掛品が三分の一になり、工場内がまるで引っ越してきたばかりの様相になっていたからだ。
■リードタイムが半分に
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I社長の話によると、TOC研修受講前は足の踏み場も無いほど仕掛品が多く、納期もひどいものは四ヶ月もかかっていたそうだ。のこぎりの目立ては特急の仕事が多く、三四日で納品してくれという要求を受けていたために工場内は混乱し、平均でも一ヶ月程度の納期だったとか。それも土日も休み無く仕事をしていて、こんなに忙しいのにちっとも儲からないと嘆いていたそうだ。
とくに、のこぎりの歯にアタッチメントをつける新製品開発が成功してからは、従来の研磨と、アタッチメントの取り付けの仕事が混在し、とてつもないボリュームの仕事を工場に投入していたことでTOCに出会う二ヶ月前には、「このままでは新工場と設備投資をしなければ」と思っていたとか。
ところが私のアドバイスで、工場建設も設備投資もせずに納期短縮、生産能力倍増となったのだから、I社長も驚くとともに、笑顔が絶えないのも当然だろう。
■まずは断るところから始まった
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 順番からいくと、I社長はTOCで投入制限をしろというアドバイスを実行するために、短納期の仕事を断ったそうだ。売上ベースで10%ほどを断って、まずは生産のリズムを整えることから始めた。これは経営者にとって勇気のいる決断だ。しかし、そのことで工場への投入制限とリズムがうまれて、みるみるうちに仕掛品が減少した。
数日後には本人もビックリするほど仕掛品が減って、作業スペースが生まれ、整理整頓をする時間や、段取り時間も減少して、結果としてリードタイム半減を達成した。
ちなみにその後断った仕事も取り戻したりで、売上は変らないそうだ。
■スペースが生まれた
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仕掛品が減少するとスペースが生まれる。製造業にとってスペースは大事だ。そこで私のアドバイスで仕掛品から、こんどは完成品スペースを生むことを前回提案しておいたので、運送会社と話し合って完成品を預かってもらうよう話した。これも運送会社がOKということなので、またしても完成品在庫のスペースが空いてくる。
ちなみに運送会社、同業者が工場を訪れて、「仕事が少なくて困ってるのでは?」と心配するほどだという。それくらい在庫が減ったのである。いまでは研いでもらうノコギリの置き場にも困らない。原材料を外に出しておいて錆びたなどということもない。職場環境も圧倒的に良くなった。
■価格交渉力
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この工場は、TOCでリズミカルに投入、生産ができるようになり、余裕も生まれたので、いまでは特急物件ならば数日でできるという。短納期は顧客の機会損失を防ぐことにもつながるので、価格交渉力も高まるだろう。
■研究開発
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ I社長は研究開発に熱心な方で、のこぎりの歯に装着するアタッチメントの特許をとって世界中に販路を広げつつある。これは歯を研磨する時間を大幅に短縮し、強度も数倍という画期的な製品だ。いまは生産能力が追いつかないほどの注文があるが、この販売に関してもアドバイスをしておいた。
詳しくは話せないが、まずは工場内の仕掛品をわずか二週間で三分の一にした成功を次に結び付けて、継続的改善の効果で、超優良企業へと、この会社を変身させなければならない。とほうもない話のようだが、I社長には近未来が見えてきているという。
■あっけない変化だった
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I社長によると、この二週間の変化は、あっけないものだったそうだ。清水先生の言われるとおりにやったら、何の投資もせず、大した汗もかかずに、あっけなくここまできたと言っていた。 これまでは、大規模投資をして生産性を上げたとか、寝ずに研究開発をして成果を出したというのに、TOCはじつにあっけなく成果が出たということらしい。それだけにこれまでのような充実感とか達成感はないと笑っていた。
この会社が今後どう変るか。楽しみなところだ。
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