■儲かるタクシー会社、損するタクシー会社
@ソフトパワー研究所
先日、早朝自宅から駅までHタクシーに乗ったときに運転手から聞いた話です。
そのHタクシーは駅の近くの小さなロータリーを独占契約しています。一番目立つ駅前には各社数十台のタクシーが常時待機していますが、Hタクシーはそこにはいません。
棲み分けのようなものかもしれません。
Hタクシーの運転手が言うには、「うちは、千円から千五百円くらいの料金で市内をくるくる回っているほうが儲かる」というのです。
一方、駅前に待機している他社はお客が千円程度の距離だと嫌な顔をします。遠くで数千円の料金となると機嫌がよくなります。
しかし、遠くに行っても帰路は空で帰ってくれば時間ばかりかかって、それこそ「時間当たり付加価値は低い」ということになってしまいます。
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たとえば、高齢者が市民病院に行きたいというと、「それなら、あそこのロータリーのHタクシーがいいですよ」と競争相手を紹介してくれることもあるそうです。
ところが、Hタクシーは低Pで回転数を上げれば儲かると考えてますから、近所でもニコニコしながら乗せてあげます。こうなると高齢者は次回からHタクシーのところへ直行していくでしょうね。
じつは、これはMGにもTOCにも通じる話なのです。
遠くに行って1回あたりの料金が高ければ儲かったと思うのは製造業的、原価思考と通じます。
一方、HタクシーはMは小さくとも回転数を上げてQが大きければいいじゃないかという超効率的経営です。
しかも顧客サービスを考えれば、どうみてもHタクシーに軍配があがります。
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世の中、タクシー会社は儲からないから値上げして経営を立て直そうとしてますが、値上げの前に工夫をしなければなりません。
Hタクシーのように、MQ思考、時間当たりMQといった考え方でいけば、まだまだ経営は自力で立て直すことができるのではないでしょうか。
駅に着いたときに、あまりにもいい話を運転手から聞いたので、1280円のところ1300円払って残りはチップとしました。(^^;
2007.0606 ソフトパワー研究所 所長・清水信博