■1:9の理論に対する試験的考察
企業に100種類の製品があるとして。本当の稼ぎ頭は全体の10%程度しかないということはよくあります。残りの90%が大半のコストを生じているという見方もできます。
これは1:9の理論と言うそうです。
それが2:8であろうが、3:7であろうが、それは大した問題ではありません。
少数のものが、大半のPQや、MQを企業にもたらしているという事実が重要なのです。
営業担当者が100人いても約10%の10人でほとんどを稼ぐ。
その10人は超戦略営業担当だともいえます。
全製品のPQやMQをグラフ化するとそれは顕著に現れてきます。
上位10%の棒グラフは高々とそびえ、その他90%は延々と地平線に沿うように横並びになります。
このグラフを各製品のPQを全体のPQで割った製品の構成比率で描くとさらに顕著に現れてきます。
以上が1:9の理論です。
そこで次に私の試験的な考え述べます。
●全製品群の上位10%を管理するために、全MQ目標を30%高く立案する。
これは企業のMQ目標を「より高い目標設定」とするためだけでなく、90%にもなる稼がない「その他の製品群の管理をしない」ためです。
MQの10%しか稼がない製品群を管理しないリスクを補うために、MQを30%上乗せしてリスク回避をするという意味です。
●稼がないその他の製品群は、「1個あれば良い」
稼がない製品群は、そもそもMがないのですからMがゼロでも構いません。その分のリスクは稼ぎ頭の上位10%が目指す130%増しの全体目標で補います。
ですから稼がない製品の仕入単価を下げるために「不要な仕入れ=不良在庫」になるような数量を仕入れないことです。その為にはVを上げても1個仕入れで良いとする=Mゼロという考え方も致し方ないでしょう。
もしくは仕入れない=廃版とする考えかたもあります。メーカーから自社をスルーして顧客に直送でもいい。
●多くのデータを持つことは精度向上の為ではない。それは製品の需要感度の分析を行うためである。
多くのデータを常に保持したがる経営者ほど全体を見失いかねない。全データを保持することが全体把握の条件ではない。ごく少数のデータが全体を構成しているのであれば私たちは真に重要なごく少数に視点をあてたほうが意思決定を行いやすく、行動も素早く、結果も出せるからである。
では全データを持つ意味は何だろう。
それは鵜飼の鵜匠は、1羽の鵜が鮎を数匹取ってきたから、「この川には大量の鮎がいる」とは思わない。全ての鵜を束ねているのだから全ての鵜が取ってきた鮎の量に応じて「ここには鮎が多い、少ない」という判断をしている。
同様に各営業所や個別店の販売が少し変動したからといってメーカーはそれ増産するということは間違いである。各製品の売れ行きを束ねるメーカーこそ、その製品の需要動向、流行などを知ることができる立場にいる。
この場合、データ数が増えるほど統計でいう乗数的に情報の精度が高まる。
つまり需要予測を行うには、全てのデータを多く持つほうが有利にはなる。
しかしそれも生産から消費者の手に渡る速度が速くなるほど情報価値は低下する。(一瞬で消費者の手に渡るような生産システムを持てば予測生産は不要になるからである)
●以上、いくつか述べてみましたが、MQ130%の計画(140%でも構わない)の上乗せ分=バッファBufferは、リスクをまともに受けないための緩衝材、余裕、クッションだということです。
TOC研修でもゲームを通じて、このバッファの意味を伝えてきましたが、製造業では原材料、仕掛、製品在庫というモノで表現しました。物理的なもののほうが認識しやすいからです。
また公開コースでは「余裕時間」として説明もしました。プロジェクト管理や流通分野などでも時間管理は大事な点です。
そして次に「目標管理」の作り方。これは最新ですが、計画立案時にバッファを設定して月別評価、半期評価といった、部分最適化思考の除去とモチベーションなどを薦めてきたわけです。
じつは、すべてに共通することは、バッファはリスクを軽減、除去するために適時、適地に、適量設けなさいということでした。
TOC理論は以上のように「たったひとつの方程式」で全ての問題を解こうしています。ですから企業の問題解決を個々に追うよりは、逆にTOC理論の側から問題を見てみるということも大事です。
今回の試験的考察も、業績アップに関わるリスク除去という視点から書いてみました。
今年も6月13日~14日にかけて新潟市でTOC最新公開コースを行います。
すでに数名の方々からお申し込みをいただいております。
もし、TOCに興味のある方は以下のブログをご覧ください
http://spken.cocolog-nifty.com/seminar/2005/10/2008_94f9.html